ドイツ音楽留学 恩師コンラート リヒター先生の思い出3 (初レッスン)
2008.07.18 Friday
大学のレッスン室です。左がリヒター先生。真ん中が兄弟子でフランス人のフレデリック。右が私です。(態度でか!)
リヒター先生の教育方針は、自分個人のレッスンを受けるだけではなく、他の生徒のレッスンも聴講してより多くの作品について学ぶべきであるというものでした。これは本当にためになりました!!
初日は、フレデリックのレッスン聴講からでした。
二人は、お互いを敬称Sieではなく親称duで呼び合いながら、曲についてのディスカッションをしていました。
曲はシューマンの幻想曲op-17。
フレデリックが、
「僕は、ここの部分は、こう思うから、もっとこのように弾きたい」
と言うと
「まあ、その解釈も悪くはないけど、だったらここの部分もこうしないと説得力ないんじゃないか?」
のような感じです。
私が日本で受けていたレッスンは、どちらかというと、先生がおっしゃることや注意を聞いて、また弾いていくような感じだったので、フレデリックがしっかりと自分の意見を言ってそれに対して先生が、しっかりとこたえてくださるレッスンはとても新鮮でした。
私は日本の音大生時代、自己主張が強く自分が弾きたいように本当に好き勝手に演奏していて、他生徒が、先生の言うことを聞いて、ただまじめに弾いているのを聴いて、
「なんでつまらなそうに弾くのかな?音楽なんだから楽しめばいいのに?」
なんて生意気にも思っていたので、
リヒター先生のレッスンを聴講して
(これは、個性を尊重してくださる良い先生につけたぞ!きっと自分に合うに違いない!)
と思ったのです。
いよいよ私のレッスン開始!
がんばってひととおり弾き終わると先生は言いました。
「この部分は、どうしてそうやって弾いているんだい?」
わたしは、意気揚々と
「自分がこうゆうふうに弾きたいからです」
と答えました。フレデリックのように・・・(笑)
すると先生は、
「なんで?」
とおっしゃったので、もう一度、小さい声で自分がそう弾きたいから・・
というと
「楽譜のどこにそんなことが書いてある?」
と言われて私は、言葉を失ったのです・・・
フレデリックのレッスンとはあまりに違い、そのときの私には、先生が何でそうおっしゃったかの意味もまるでわからなかったのです。(笑)
一瞬、人種差別か?なんて馬鹿なことを考えたくらい!(笑)
ようするに のだめカンタービレの、のだめちゃんと一緒でした。
何の作品に対する解釈や、正しく楽譜をアナリーゼすることなくただ好き勝手に弾いていただけだったのですから。それまでの私は・・・
この時から、私に抜けきっていた部分
アカデミズムの洗礼を受けることになるのです。
つづく